日本社会文学会

Association for Japanese Social Literature

*日本社会文学会について
*   日本社会文学会設立趣意書
 
 日本における近代文学研究は、戦後において大いに盛んになり、さまざまな年代、さまざまな領域に光があてられ、民権運動期から戦後まで、社会文学の潮流あるいはその作家や作品についても、郷土史・民衆史・地域史などの研究とあいまって戦前と比べられないほどの規模と細やかさで研究が進んでいます。しかし、残念なことにそれについての研究が、そして研究者もバラバラで、十分にして必要な情報交換あるいは共同研究の場所を持つことができないでいるのが現状です。加えて、戦前のプロレタリア文学関係者のみならず、戦後における民主主義文学・社会主義文学などの関係者のなかからも物故する人が相次ぎ、資料の保存や聞き書きなど、計画された共同調査の必要にも迫られています。
 他方、現代日本文学の趨勢を見ると、「内向への道」はやがて「空虚」あるいは「空無」に傾き、一つの大きな危機を迎えています。これはどう考えてみても一つには「社会」を視野に収めなかったというより、むしろそれに目を背けてきた結果ではないかと思います。
 今、社会問題といっても、単に労働問題や婦人問題や部落差別問題があるだけではありません。環境あるいは公害問題、教育問題や戦争と平和の問題など、さまざまな問題が新たにクローズ・アップされています。そういう意味で日本の近現代文学が「社会」をどう描きだしてきたかについての共同討議あるいは共同研究の場所として一つの新しい学会をおこすことの必要を私達は痛感し、ここに本年5月を期して日本社会文学会を設立したいと思います。
 ぜひ趣意を諒とされて御参加ください。

1985年4月
 
*   日本社会文学会 設立発起人・代表理事
 
日本社会文学会 1985年5月25日発足
【発起人】飛鳥井雅道、祖父江昭二、西田勝、堀切利高

【代表理事一覧】
1:西田 勝   1985年度~1993年度前半
2:布野 栄一  1993年度後半~1994年度
3:平林 一   1995年度~1996年度
4:杉野 要吉  1997年度~1998年度
5:川村 湊   1999年度~2000年度
6:浦田 義和  2001年度~2004年度
7:高橋 敏夫  2005年度~2006年度
8:長谷川 啓  2007年度~2008年度
9:島村 輝   2009年度~2010年度
10:大和田 茂  2011年度~2012年度
11:小林 孝吉  2013年度~2014年度
12:小森 陽一  2015年度~(現任)
 
 自民、公明両党は6月15日早朝、良識の府、熟議の府であるはずの参議院本会議において、委員会採決を省略する中間報告という姑息極まりない手段をもって「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下「共謀罪」法案)の強行採決を行った。国内外から出されていた多くの疑問点、論点に対して真摯に向き合おうとしないばかりか、もっぱらはぐらかし、採決の奪取のみをめざしたその行為は、まさしく民主主義を愚弄する、断じて許しがたいものである。
 日本社会文学会は4月24日に、この法案に含まれた、憲法が保障する内心の自由を侵し、現在の刑法の原則からも著しく逸脱する、いくつもの問題点を指摘し、これは、市民の日常生活を監視し、内心の自由を萎縮させていく、新たな治安維持体制の構築を目指すものであるとして、思想・表現の自由、学問・研究の自由、良心の自由のない、「物言えぬ社会」を作らないために反対するという理事会声明を挙げた。この声明と前後して、日弁連をはじめとする国内の数多くの団体や国連特別報告者など国外からも懸念が示されていた。しかし、これらの疑問点、論点は全く解決されないばかりか、そっくり残されたままである。
 日本社会文学会は、この、強行の末に成立した共謀罪法の廃止にむけ努力するものである。



2017年6月25日
日本社会文学会

 2003年、05年、09年と、過去3回にわたって国会に提出されたものの、強い反対・批判によって廃案となった「共謀罪」の内容を盛り込んだ「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下「共謀罪」法案とする)が、内心の自由を大きく侵す憲法違反の内容を盛り込んだまま、再び国会に提出され、本格的な審議に入った。現在、国会で審議中の、この「共謀罪」法案の成立に、私たちは断固反対する。
 政府は、2020年東京五輪におけるテロ対策や、国際組織犯罪防止条約の批准のために、この法案を成立させる必要があると述べている。しかし、そもそもこの国際条約はテロ対策のためのものではない。また、テロ対策として日本にはすでに、未遂以前の「予備」段階での処罰規定が存在しており、国連のテロ対策主要13条約をもすでに批准している。政府の挙げた理由は東京五輪に名を借りた姑息な詭弁に過ぎない。
 また政府は「犯罪の主体を組織的犯罪集団に限っているから、一般の人は対象とはならない」と繰り返し説明している。しかし、「正当な活動を行なっていた団体でも、目的が犯罪を実行することに一変したと認められる場合には、組織的犯罪集団に当たり得る」とも説明している。この場合、「一変した」と判断するのは警察以外にない。「一般の人」でもその判断次第では対象になりうるということである。
 現在の刑法の原則は、既遂および未遂の段階での摘発・処罰が原則である。しかし、この法案においては、計画や合意の「準備」行為だけで処罰の対象となる。これはまさしく、刑法の原則を著しく逸脱するものである。この「準備」行為を立証するためには、日常的に監視する必要が出てくることになる。例えば、2009年に憲法に反して成立した通信傍受法(盗聴法)でさえ、その対象を「組織的な殺人、薬物及び銃器の不正取引などの重大犯罪」と規定していたが、この「共謀罪」法案はその対象枠を曖昧にし、拡大するものである。
 以上のように、この「共謀罪」法案のねらいは、処罰内容とその対象を膨張させ、市民の日常生活を監視し、内心の自由を萎縮させていく、新たな治安維持法体制の構築に他ならない。文学に関わった数多くの人びともまた、戦前・戦中に治安維持法の犠牲になったことを、私たちは記憶している。日本社会文学会は、創立大会で「大逆事件と文学」をテーマにしたように、権力による言論弾圧とそれに対する抵抗の問題を取り上げてきた。ふたたび、思想・表現の自由、学問・研究の自由、良心の自由のない、「物言えぬ社会」を作らないために、日本社会文学会はこの「共謀罪」法案の成立に断固反対する。



2017年4月24日
日本社会文学会理事会
代表理事 小森陽一

 安倍内閣は、昨年9月に強行採決の末に成立した安全保障関連法の一つである改正PKO法により、南スーダンに派遣される自衛隊に新たに「駆けつけ警護」と宿営地共同防護の任務を付与しようとしている。
 日本社会文学会は、集団的自衛権の行使を認める安全保障関連法の成立に対して、日本国憲法を破壊するものとしてその成立に強く反対し、成立後にはその廃止を訴えてきた。
 現在南スーダンでは、2014年の政府と反政府勢力の間の停戦合意が完全に崩壊し、国連施設さえ襲撃される、内戦状態が続いている。今年7月8日には首都近くの幹線道路でバスが襲撃され21人が死亡、10~11日の戦闘では数百人の死者が出たと報じられた。10月8~13日にも、戦闘で60人が死亡したと政府軍が発表している。
 国連安保理は8月に、国連南スーダン派遣団を増派することを決議し、この部隊に先制攻撃まで認めた。一方、南スーダンの政府軍は、国連PKOの活動を批判しており、今後、受け入れ国の政府軍と国連PKOとの武力衝突という、これまでに経験したことのない事態さえ予想されている。この危険な情勢から、部隊を引き上げる国さえ出てきている。南スーダンの現在の状況は、政府自らが考えた「PKO参加5原則」の条件にすら明確に反するものとなっている。
 にもかかわらず、安倍内閣はこの事態に対して、国会において「(戦闘ではなく)衝突であると認識しております」(稲田防衛相)と、事態の認識を捻じ曲げた発言をして、派遣される自衛隊に「駆けつけ警護」と宿営地共同防護の任務の付与を強行しようとしている。
 日本社会文学会は、このような安倍内閣のもくろみを、これまで「専守防衛」を旨として活動してきた自衛官の命を死の危険にさらし冒瀆するとともに、日本国憲法の平和主義を根底から破壊する許しがたい行為として、強く反対し、撤回を要求するものである。


2016年11月12日
日本社会文学会 秋季大会

 いま、7月の参議院選挙をひかえ、昨年9月に醜く強行採決された安保関連法を廃止しようとする動きが、日本各地、そしてさまざまな階層の、広範な市民の間から、政党を巻き込む形でわきおこっている。これは、戦後日本が悲惨な戦争の経験にもとづいて築きあげてきた民主主義、立憲主義、そして日本国憲法の下での平和主義をことごとく蹂躙してきた安倍政権に対する強い危機感のあらわれであり、政治を市民の手に取り戻そうとする動きに他ならない。昨年の春季大会で「安全保障関連法案に反対する」声明を挙げた日本社会文学会は、これらの広範な市民の運動と強く連帯し、安保関連法の廃止に向け、努力するものである。右、決議する。


2016年6月25日
日本社会文学会 春季大会

 
 戦後70年となる現在、日本国憲法の前文および第9条が規定する恒久平和主義、憲法がつらぬく立憲主義および人権尊重などは、「特定秘密保護法」以後、憲法解釈の変更による「集団的自衛権」の行使容認の閣議決定や、このたび第189回国会に提出された「安全保障関連法案」によって、大きな歴史的危機に直面している。
 日本社会文学会は、2013年11月17日秋季大会において「特定秘密保護法案」に反対する声明を、2014年6月21日春季大会では「集団的自衛権」の行使容認に反対する声明を発表した。この法案と閣議決定はともに、これまで堅持してきた「専守防衛」という安全保障政策の決定的な転換に行き着くものであり、自衛隊による武力行使と新たな戦争への道を開く大きな危険性をはらんでいる。
 安倍政権は「積極的平和主義」の名のもとに「安全保障関連法案」を提出し、2015年5月26日、衆議院本会議での審議が始まった。本関連法案は、自衛隊を「現に戦闘行為を行っている現場」以外であれば世界中のどこにでも派遣し、弾薬・燃料等をアメリカや他国軍隊に補給することを可能とするものである。これは他国軍隊の武力行使への積極的協力であり、当該軍隊と一体となって戦争に参加することにほかならない。
 それは敗戦後に制定された憲法が堅持してきた、世界に誇る平和主義に全面的に反するものであり、自衛隊は戦争行為にある相手方からの武力攻撃を受け、現場の自衛官は身の危険にさらされる可能性が高くなる。本関連法案の衆議院での審議は、存立危機事態、重要影響事態、機雷除去、後方支援等すべてが曖昧で、国会での論議も、国民への説明責任もきわめて不十分である。
 また、6月4日の衆議院憲法審査会では、与党を含む各党が推薦した憲法学者3名は、「集団的自衛権」を行使可能とする「安全保障関連法案」は、いずれも「憲法違反」であるとの見解を示した。
 一方、今国会に先がけて、すでに日米両国はこの安保関連法案と結びつく新たな防衛協力のための指針(ガイドライン)に合意している。この新ガイドラインと安保法制は、従来の憲法解釈を根拠としてきたものから逸脱し、実質的な「憲法改正」の意味をもっている。また、2015年4月29日に米議会両院合同会議において安倍首相が行った演説「希望の同盟」では、日本は安保法制の充実に取り組み、夏までに法案を成就させると強調していた。安倍首相は、国会審議の始まる一ヶ月も前に、米議会で「安全保障関連法案」の成立を約束しているのである。
 以上のように、「特定秘密保護法」「集団的自衛権」の行使容認、「安全保障関連法案」等、これら一連の政治的策動は、世界に例を見ない日本の民主的な平和憲法の精神を決定的に害うものであり、日米の「希望の同盟」は新たな「軍事同盟」となる可能性をはらんでいる。
 日本社会文学会は、このような日本の政治・社会の根本的転換を正当化する「安全保障関連法案」に反対し、世界の真の「希望」となる現行憲法に基づき、国際平和外交による歴史認識をもとにしたアジアとの関係を構築することを強く要請する。



2015年6月13日
日本社会文学会 春季大会
代表理事 小森陽一

【2015年7月10日追記】現在、「安全保障関連法案に反対する学者の会」が、あらゆる分野の学者・研究者と市民に向けてアピール賛同署名を募るとともに、抗議・要請行動を行っています(HPはこちら)。

【2015年11月11日追記】 2015年9月19日に”成立”した安保関連法に関し、日本社会文学会は上記の大会声明の立場に立ち、その廃止に向け引き続き取り組む。
2015年11月11日 日本社会文学会理事会

*   声明:学問の自由への侵害および歴史修正主義、ヘイトスピーチに反対する
 
 近年、社会問題となっているヘイトスピーチは、学問の自由を侵害するかたちで教育現場にも浸透しつつある。特定の民族や国籍の人々を誹謗中傷し、暴力や憎悪の対象とするヘイトスピーチは、人権を侵害する明らかな差別行為そのものであり絶対に許されるべきものではない。
 2014年5月21日の産経新聞は、広島大学の一学生からの投稿をもとに「講義で『日本の蛮行』訴える韓国映画上映」「広島大准教授の一方的『性奴隷』主張に学生から批判」という見出しの記事を掲載した。この記事を契機として、いま准教授がヘイトスピーチの標的とされる事態が起きている。
 また、2014年1月には、立命館大学のある授業について、朝鮮学校無償化問題をめぐり、受講生と思われる人物が事実をねじ曲げたツィートをしたことによって、担当教員が猛烈なネット攻撃にさらされた。
 これらの事例は、現在の日本社会に歴史修正主義が蔓延し、大学の教育現場にもヘイトスピーチの暴力が浸透していることを意味している。外部の報道機関が特定の授業を取り上げて担当教員を非難することは憂うべき事態であり、日本国憲法23条に規定されている学問の自由を侵害し、教育の独立性および教員と学生の信頼関係を著しく損なうことになる。
 広島大学准教授の尊厳を貶める産経新聞の記事に関しては、すでに日本科学者会議広島支部幹事会、市民有志で結成された HIROSHIMA-ACTION 、広島大学教職員組合総合科学支部役員会等が抗議声明を出している。日本社会文学会はこうした声に連帯し、歴史修正主義およびヘイトスピーチに反対し、憲法に定められた学問の自由の保障を広く社会に訴えるものである。


2014年6月21日
日本社会文学会 春季大会

*   声明:「集団的自衛権」の行使容認に反対する
 
 日本社会は、いま戦後最大の歴史の岐路に立っている。
2013年10月に閣議決定をし、同年12月の第185回国会で成立した「特定秘密保護法」は、「情報管理委員会」の機能の不透明さとともに、拡大解釈の危惧を含みつつ成立以後1年以内に施行すると言われている。本法律は、報道の自由、知る権利、プライバシー権、学問の自由など、さまざまな見地から憲法で保障された人権を侵害する恐れがある。
そのため、日本社会文学会は2013年11月17日に秋季大阪大会において、「特定秘密保護法案」に強く反対し廃案を要請する声明を発表した。
 この「特定秘密保護法」成立以後、政府は「国家安全保障会議」(日本版NSC)の創設、「武器輸出三原則」の見直し、さらに「積極的平和主義」の名のもとに、憲法の規定を超えた「集団的自衛権」行使容認へと一挙に突き進もうとしている。
 69年前の敗戦のなかから、人類にとって普遍的価値である「平和」や「戦争放棄」を理念として公布された日本国憲法の解釈を変更して、PKOの警護のための武器使用の正当化や、領土問題、核・ミサイル問題など、主に東アジアの危機を理由に、法的根拠のない私的諮問機関である「安全保障の法的基盤に関する懇談会」の報告書をもとに、国民の理解や国会での十分な審議、手続きを経ないまま、閣議決定による「集団的自衛権」行使容認に大きく踏み出そうとしているのである。
 アメリカなどの他国を守る「集団的自衛権」の行使は、戦後半世紀以上積み重ねられてきた憲法解釈を変更し、「専守防衛」という安全保障政策の決定的な転換点となる。このことは、日本が保持してきた憲法の基本である「立憲主義」の否定になるばかりか、自衛隊による戦後初めての武力行使に道を開くことになり、大国による他国への軍事介入の正当化にもつながるであろう。それは憲法が否定してきた「戦争する」権利の行使容認となる。
 自公政府与党では「安全保障法制整備に関する与党協議会」において、海上保安庁や警察では対応できない「グレーゾーン事態」、PKOの際の「駆けつけ警護」、直接攻撃されていないが武力をもって他国を助ける「集団的自衛権」の行使について、「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の見直し時期を視野に、すでに協議がスタートしている。また、5月29日の衆院予算委員会において、安倍首相は行使容認が認められた場合には、自衛隊を中東・ペルシャ湾のホルムズ海峡に派遣することさえ想定していることを明らかにしている。
 以上のように、安倍政権が画策する「集団的自衛権」行使容認は、現行憲法の空洞化や破壊を招き、再び日本を新たな戦争へと導く、きわめて重大なデモクラシーの危機をはらんでいる。日本社会文学会は、政府の「集団的自衛権」行使容認に強く反対するとともに、世界に誇る「平和憲法」を堅持することを要請するものである。


2014年6月7日
日本社会文学会理事会
代表理事 小林孝吉

*   声明:「特定秘密保護法案」に反対する
 
 さる10月25日、政府は、特定秘密保護法案(以下、「法案」と略す)を閣議決定し、現在、国会で法案の審議が始まっている。しかし、この法案は、報道の自由や知る権利、プライバシー権などの見地から、憲法で保障された人権を侵害し、民主主義を破壊する恐れがあることについては、各界からすでに多く指摘されているところである。

 法案は、(1)防衛、(2)外交、(3)外国の利益を図る目的の安全脅威活動の防止、(4)テロ活動防止の4分野に関し、「わが国の安全保障に著しく支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要である」情報を「特定秘密」に指定するとしているが、「特定秘密」に指定できる情報の範囲が非常に広範で曖昧である。たとえば、原発の問題をテロ活動防止の観点から「特定秘密」にひそかに指定されかねず、もし事故が起きた場合、正確な情報が隠蔽され、我々国民の生命が危険にさらされるおそれがある。

 また、法案では、行政機関の長のみの判断で文書の「特定秘密」指定を可能とし、指定が解除されない限りその妥当性は誰も監視できないこととなっている。そのため、第三者からのチェックを欠いた恣意的な運用がなされる可能性が否定できない。そのうえ、「特定秘密」の漏洩を禁止し、厳罰を科すとともに、それを業務として扱う公務員等については、その家族関係、生活上のプライバシーまで幅広く調査し、「適正評価」を行うとしている。

 しかも法案では、「特定秘密」に指定された文書が、各機関での保管期限満了後に国立公文書館などに移管されて公開されることが担保されておらず、内閣 の承認さえ得られれば半永久的に特定秘密として情報を秘匿し続けることができることとなっている。そのため、史(資)料としての利用が不可能なまま公文書が闇に葬り去られる可能性がある。

 このように当法案は、文学や歴史研究にたずさわるものたちにとって、「特定秘密文書」を史料として入手しようとした際に、「特定秘密を保有する者の管理を害する行為」とされ、刑事処罰 の対象にされる恐れがあることも看過できないうえに、学問の自由という観点からもとうてい容認することはできない。さらに、本法案は国家安全保障会議(日本版NSC)、集団的自衛権の解釈変更、憲法改悪へとつながる危惧もはらんでいる。

 政府・行政機関の文書は、あくまで国民への公開が原則であることによって、健全で平和な民主主義にもとづく社会を築くことができる。よって憲法に定められた学問の自由、知る権利などの諸権利を制約し、言論・表現の自由を奪いかねないこの法案に強く反対し、廃案を要請するものである。


2013年11月17日
日本社会文学会 秋季大阪大会

*   声明:憲法96条の発議要件緩和に反対する
 
 昨2012年末の衆議院選挙で政権与党に返り咲いた自由民主党、および維新の会、みんなの党などを中心に、日本国憲法96条を変えようという動きが画策されている。現行の「総議員の3分の2以上」から「総議員の過半数」へと改憲発議の要件を大幅に緩和しようというものである。

 憲法は、不可侵かつ永久の権利として、国民に基本的人権を保障し、立法権を含む国家権力の濫用によって、国民の基本的人権が侵害されることがないようにするために、権力に「縛り」をかけることを根本目的とする国の最高法規である。96条が各議院の総議員の3分の2以上の賛成による議決を求めたのは、この立憲主義の理念に由来する。多数議席を背景にした、その時々の政権に、都合の良い改憲を許してしまうということは、立憲主義自体を否定することにほかならない。

 「連邦議会の両院の3分の2以上の賛成または3分の2以上の州議会の要請による憲法会議」による発議と「4分の3以上の州議会または4分の3以上の州の憲法会議」の承認という厳しい要件を掲げるアメリカ合衆国をはじめとして、諸外国の憲法を見ても、改正のためには一般の法律より厳しい手続を求めるものが多数である。96条の発議要件だけが著しく厳しいということはできない。

 自由民主党の石破茂幹事長は、今年4月13日のテレビ番組で、同党がめざす96条改正は将来的な同第9条改正を念頭に置いたものであるとの認識を表明した上で、96条改正の是非を問う国民投票が行われる場合には「国民は(同第9条改正を)念頭に置いて投票していただきたい」と述べた。現在進められている96条改正が、まず改正規定を緩和して憲法改正をやりやすくし、その後、憲法第9条の改「悪」等に踏み出すことを企図するものであることはここに明らかに示されている。

 96条の発議要件緩和については、憲法学者を中心とする「96条の会」の結成、各地の弁護士会による決議、自由民主党のもとの幹事長である古賀誠氏の発言などをはじめとして、国民の各界各層にわたって広く反対の声が上がっている。日本社会文学会はこうした声に合流し、憲法96条の発議要件緩和に反対することを表明する。

2013年6月15日

日本社会文学会
 
*   大会アピール
 
 日本社会文学会は、昨年6月25日、脱原子力、自然エネルギーの利用による発電の促進への転換を訴える「アピール」を、2011年度総会で採択した。
 その「アピール」の趣旨にもとづき、本会は、春季大会の名において、このたびの野田首相による大飯原発再稼働決定に強く反対するものである。

2012年6月23日

日本社会文学会
 
*   脱原子力、自然エネルギーの利用による発電の促進への転換を訴える
 
 2011年3月11日に発生した大規模な地震とその後の津波は、東日本の広い地域に甚大な被害を与えた。加えて東京電力福島第一原子力発電所では、地震直後に複数の原子炉が炉心溶融を起こし、水素爆発などを含む深刻な損傷によって、大気中や土壌、海水、地下水等に放射性物質を大量に撒き散らす結果となった。大震災から100日以上を経た今日も、地震、津波の被害による避難者のみならず、原子力発電所の事故によって居住地からの退避を命ぜられている人々が多く存在し、ますます増え続けているのが実情である。強制的な避難の対象になっている地域以外にも、強度の放射能汚染を受けている場所があり、子どもたちを中心に、将来を担う世代の健康被害が大いに懸念される状況となっている。

 福島第一原子力発電所の深刻な事故を受け、その終息の方向が見えない中、菅内閣は中部電力浜岡原子力発電所の運転中止を「お願い」し、電力会社がそれを受入れる形でひとまず浜岡原発の稼動は停止した。しかし全国に散在する原子力発電所が持つ危険性は、これで解消されたわけではない。

 「55年体制」が整備されていく過程に歩調を合わせるように、原子力発電所は「国策」として造られてきた。政府と電力会社、原子力工学の学界が、挙げて原子力発電所の「安全」を強調する中で、今回の事故に見られるような深刻な事態は想定することすら問題外とされ、歴代自民党政権も、政権交代によって成立した民主党を中心とする政権も、原子力発電所への依存、増設の政策を推進してきた。この事態をもたらすにいたった国、電力会社、原発の安全性をを強調してきた原子力工学専門家の責任は、到底見過ごしにできない。

 福島原発の事故をきっかけに、ドイツ、イタリアなどでは原子力発電に依存するエネルギー政策からの脱却・転換が選択された。第二次世界大戦終結の直前に2発の原子爆弾の投下を受け、ビキニ環礁の水爆実験で被曝による犠牲者を出した日本は、この原発事故で、核エネルギーが生み出す害悪に、重ねて直面することになった。この事態を直視し、歴史的な反省の上にたって、原子力発電への依存から脱却し、自然エネルギーの利用へと転換しなければ、今後の国民の安全・安心な生活は保障されないであろう。日本社会文学会は、大会の名において、「脱原子力、自然エネルギーの利用による発電の促進への転換」を訴えるものである。

2011年6月25日

日本社会文学会
 
*   憲法改定を目的とする「国民投票法」の廃止を訴える
 
現行の日本国憲法改定を目的とした「国民投票法」がこの5月18日に施行された。しかし関連の法整備はまったく進んでおらず、事実上その発動は不可能な事態となっている。

この法律自体が多くの矛盾と重大な欠陥を持つものである。「任期中の改憲」を急いだ自公連立の安倍晋三政権は、2011年までに国民投票を実施するという「工程表」までつくり、「逆算」で強引に同法を数の多数で押し切った。このことがこの未完成な法律を生む最大の要因となった。

現在は「憲法を守れ」という国民世論が広がっている。また深刻な格差と貧困をもたらした自公体制への批判は、昨年秋の「政権交代」を生んだ。総選挙で、民主党が憲法改定をマニフェストのなかに正面から掲げることができなかったことなどがこの事態を象徴的に示している。

国民投票法の関連法整備がこの3年間審議されずに放置されてきた状況は、国民が改憲そのものも、そのための手続き整備も要求しておらず、まさに同法が「必要のない法律」であることを証明している。

このような状況にあっては、少なくとも、国民投票法の必要性や成立の経緯そのものを問い直すべきである。日本社会文学会は、日本国憲法の掲げる平和主義を擁護する立場から、この法律が施行された今日の状況において、同法の廃止を訴えるものである。

2010年6月19日

日本社会文学会
代表理事 島村 輝
 

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